「身近にたいへんな状況の人がいるので、励まそうとしたら逆に怒らせてしまった」
「慰めようと思って声をかけたのに、酷い言葉を返されて、こっちが傷ついた」
そんな、『つらい当事者をサポートする側』の方々が、逆に感じてしまうストレスを和らげる考え方をご紹介する記事です。
以下では、
・人の心を支えるための考え方
・つらい体験をした人とのコミュニケーションにつまづいた時の心の持ち方
についてご紹介します。
この記事は、楽陽堂鍼灸院の中にある美容・メンタル部門”健考庵”のスタッフ紫檀(したん)が執筆しています。
楽陽堂と健考庵では、東洋医学の知見をもとに体と心の両面を整えることで、患者様と一緒に二人三脚で、ご本人にとっての楽しく陽(あか)るい未来を迎えられるよう、お手伝いをしています。
健考庵では、お話を傾聴する場を設けています。安心して気持ちを吐き出す場所としてご利用いただけます。詳細はこちら。
人の心を支えるための3つの前提
相手を励ましたい、慰めたい、精神的に支えたい。
その思いが強いほど、あなたにとって、そのお相手は大切な存在なのだと思います。
大切な人が苦しんでいたら、あなたも同じくらい、つらく苦しい思いを感じながら
「私ががんばらないと」
「私も一緒に苦労しないと」
と思われることがあるかもしれません。
ただ、注意するポイントが3つあります。
これを間違ってしまうと、
支えるどころか共倒れとなってしまい、もう一人心がつらい被害者が増える。
相手との関係性が崩れてしまう。
という悲しいことになりかねません。
そうならないためのポイントを、詳しく説明していきます。
あなたまで被害者にならないと決意する
人こそ人の鏡、ということわざを聞いたことがあるかと思います。
自分の言動が、相手から同じように返ってくる、というような意味合いで使われることが多いですね。
それだけではなく、人は少なからず関わる相手に影響を受けます。
気持ちが元気な人と接していると元気を分けられるような気持ちになった経験がある、という方もいるでしょう。
同じように、はじめは元気に接していても、いつのまにか相手と似たような沈んだ気持ちになってしまっている場合も少なくありません。
相手を励ましたい、元気にしたいなら、あなたは(無理やり思い込むのではなく)元気でいられるように、決意して、いつもご自身の心のコンディションを整えるように意識していくことが大切です。
心の傷が深いほど相手を傷つけることを理解する
落ち込んだ人に声をかけた時に、思ってもいなかったような、普段のその人からは想像もつかないような言葉や態度を見せられ、びっくりしたり悲しくなったりすることがあります。
「こんな人だなんて思わなかった」
「そんなつもりじゃなかったのに」
なんて、自分が傷ついてしまうことも少なくありません。
気持ちの状態によっては、普段とはまったく違う言葉や行動を選んでしまうことがあるのです。
それだけ、辛く苦しい体験による心へのダメージは、人のコミュニケーション能力や、判断、思考に大きな悪い影響を与えます。
あなたを傷つけるように吐き出された言動は、相手の心の傷の深さと同じ。
普段はそんなことはないのに、あなたを傷つけるような言動をする、という場合は、あなたを傷つけたいという思いで出されたものではなく、それくらい傷ついている、ということをわかって欲しいという思い。
と同時に、それほど傷ついている相手に対して、残念ながら、あなたがかけた言葉や態度が適していないのかもしれません。
立ち直ることは本人にしかできない
大切な人が苦しんでいる時、「早く元気になって欲しい」と思うことは自然なことです。
ですが、思いが強すぎるあまり、サポートする側の希望を押し付けてしまいがちになってしまうことが多いものです。
苦しんでいる真っ最中に「元気だして」とか「くよくよしないで」という声掛けをしてしまって本人の苦しみが増強してしまったり、人間関係が壊れてしまう、というのは、残念ながらよくあることです。
あなたは、そうなることは望んでないはず。
そんな状況になってしまう原因は「自分の〇〇したい」という想いを、結果的に押し付けてしまうのが一つ。
もう一つの主な原因は「私が治してあげよう」と考えてしまうことが多いことです。
ご本人の心はご本人のもの。周囲からのどんなきっかけがあったとしても、ご本人にしかご本人の心を動かすことはできません。
転んだ子を起こし上げるのに、周囲の人が抱え上げることはできますが、実際に「姿勢を起こし」「立つ」のは本人にしかできないのと似ています。
それを心の隅において、サポートしていく必要があります。
サポート上手は自分を愛せている人
あなたは自分のことを大好きでしょうか?愛していますか?
突然なにを、と思われるかもしれません。
ですが、心理学では、人の心を癒したり支えるためには、自分を十分に愛していないと、きちんと人を癒したり支えたりできない、と言われています。
自分を十分に愛せていないと、相手を思って発した言葉が、無意識に以下のようになりがちだからです。
相手を慰めるつもりで発する言葉が、本気で自分と向き合ってくれていないと感じる言葉を選びます。
相手を励ますつもりで発する言葉が、気持ちを押し付ける言葉を選びます。
相手を癒すつもりで発する言葉が、理解されていないと感じる言葉を選びます。
相手の話を聞こうと思って発する言葉が、利用されるかもしれないと感じる言葉を選びます。
これは、メンタルケアや言葉の知識でどうにかなるものではなく、自分が自分を愛せていない人が無意識に持っている価値観と言葉選び、があるからです。
自分を愛せていない人のコミュニケーションにおける怖い副作用
また、自分を愛せていない人がするコミュニケーションには、怖い副作用もあります。
それは、相手をよい方向へ導くのではなく、悪い方向へ向けてしまう。
というものです。
一時は相手の気分を良くしたとしても、結果的に相手にとってよくない選択をさせてしまったり、相手と不適切な距離感になってしまったり。というものです。
例えば、あなたの励ましで、ひと時が気持ちが安らいだように見えるけれど、いつまでたってもあなたがずっと甘やかすようにしないといけない状態が続いたり。
例えば、あなたが家族のように色々世話をやかないといけなくなってしまったり。
例えば、いつまでも相手のネガティブな感情を受け止めるばかりの関係性になってしまったり。
例えば、あなたが疲弊するまでコミュニケーションをとった結果、今度はあなたが精神的につらい状況に陥ってしまったり。
などです。
これらの関係性の悪化は、自分を愛していれば適切な距離感や量がわかるのですが、自分を愛せていないと、距離感を縮めすぎたり、コミュニケーションの量が多すぎてしまったり、言葉かけや接し方を間違ってしまったりします。
これが『共依存』を作り出すことで、相手にとっても自分にとっても人間同士のコミュニケーション能力を破壊し、いきつく先は、薬などを使わなければいけないほど心が壊れてしまうように悪化していくのです。
つらい体験をした人とのコミュニケーションにつまづいてわかること
自分は癒したいと思ったり、支えになりたいと思って接したのに、逆に関係がぎくしゃくしてしまった、こちらが傷ついてしまった。
そんな残念な思いを感じた時、それは、そのコミュニケーション体験があなたに何かを教えようとしているサインです。
サインにはいろいろありますが、『そのコミュニケーション体験をどう感じたか』によって、おおまかなことがわかります。
『相手を責める気持ちが湧く』のは、なんのサイン?
はじめは、大切な相手だからこそ支えたい、と思っていたのに、怒りや許せない気持ちが湧いてしまった時。
人に対して価値観を押し付けている、普段から自分のことも責める傾向があるよ、というサイン。
であることが多いです。
価値観、というのは自分が自分らしくあるための、考え方や感じ方です。
それをもつこと自体は、当たり前のことだし、悪いことではありません。ただ、他の人にとってもその人らしい価値観や感じ方がありますから、あなたも相手も他の価値観もどれも間違っても悪いものでもないのです。
自分と違う相手の価値観、相手のその時の感情を『正しい』『悪い』とジャッジする、あなた自身の考え方、価値観から見直す必要があるかもしれません。
あなたは世界中でたった一人のあなたであり、あなたと同じ価値観がないのだとしたら、相手も他人もまた同じ。
善悪で判断することを無意識にしていると、相手を否定し、自分の価値観を押し付ける言動が多くなりがちです。同時に、自分に対しても厳しい自己評価をしたり、強い思い込みで縛りつけている可能性も。
『否定された』と感じるのはなんのサイン?
相手に言葉をかけた時に、傷つくような言葉を返されて、嫌われた、とか、自分が否定されたような、哀しい気分になってしまったら。
それは、あなたが、あなた自身を十分に認めてあげていない、というサインです。
普段から自信がなかったり、自分はダメだなぁ、という自己否定の思いが強かったりしませんか?
常に自信たっぷりでいる必要はありませんが、コミュニケーションに限らず、何かネガティブな体験をした時に、すぐに『自分が悪い』『自分が否定された』と感じるのは、常にあなたがあなた自身をそう思っているからです。
同時に、どのような時も『自分が』と、自分に対する内向きの意識が働いていることで、この体験によって本来注目すべきポイントが見えなくなってしまいます。
相手に注目をしていた場合、相手がネガティブな反応を返した時は、「相手が今は心が乱れているから、そんなことをいってしまったんだな」とか「そんな言動をした相手はどんな心境なんだろう」と、目線が外側に向くものです。
また、常に注目が自分に向いているため、相手にも自然と「本当は自分を見てもらえてない」と伝わっているものです。
相手の態度に不満を感じたら、なんのサイン?
こちらはとても心配して時間も場合によってはお金もかけてサポートしたのに、相手の反応が物足りない。お礼の一言もあっていいんじゃないか。こんなことを言われた、失礼じゃないか。
そんな思いがよぎったら、それはあなたが自尊心が強すぎる一方で、劣等感を抱いているサインです。
相手のあなたに対する態度が不当だ、という思いは、あなたの思い違いであることが多いものです。
普段から、周りからの自分に対する評価が適切じゃない、馬鹿にされている、と感じることが多くないでしょうか?
それは、あなたが人同士のコミュニケーションで上下関係や人としての価値、地位的なものにこだわりすぎている表れです。
あなたに対する態度や言動は相手が自由に決めることであり、多くの人は、人同士の間にそこまで『人としての価値』の違いがあるとは考えていません。
ですので、誰もあなたを馬鹿にしたり見下しているわけではなく、『人としての価値が存在する』という価値観を見直すチャンスかもしれません。
もし、人に優劣がないとしたら、相手とは対等の存在で、あなたの相手への接し方も、相手のあなたへの接し方も、間違っていないとしたら、どうでしょうか?
相手は何も間違っていないし、あなたは何も不満に思うことがない、お互いに心の平和が訪れる世界もまた、よいものではないでしょうか?
一方で、自分に強い劣等感を感じている場合もあります。
あなたもまた一人の大切な人間なのですから、劣っている、価値がない、と思い込む必要はないのです。
そうではなくて、もしも「相手にお礼を言って欲しかった」という思いがあったとしたら、相手に自分を受け入れて欲しい、認めて欲しいというサインです。
普段から、無意識に「人に受け入れられてない」「自分は人に受け入れられない存在だ」という気持ちを抱えているのかもしれません。
人をサポートすることで気づく自分自身
人をサポートする、ということはあなたから相手への『ギブ』のようですが、それには少なからず返ってくるものがあります。
『人は自分を映す鏡』
という言葉がありますが、返ってきた反応がもしネガティブに感じたとしても、『一つのいい経験』だと捉えることで、あなたも、そして相手もより良く生きられるようになっていきます。
とはいえ、やっぱりあなた自身の心が元気でないと、そんな風に前向きに捉えることも難しいことでしょう。
つらい人に限らず、人はいつでも自分の都合のいいように反応を返してくれるわけではありません。
ですから、コミュニケーションはいつも心の余裕を持ってやっていきたいですね。
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