産後に起こる腱鞘炎。原因は抱っこ…だけじゃない?!これ、鍼灸で改善できます

婦人科

ご覧いただきまして、ありがとうございます。

今回は産後の腱鞘炎について、鍼灸師からの所見と改善策をお伝えしていこうと思います。
最後読むと、腱鞘炎で苦しむあなたの改善のヒントがみえてきますよ。

女性の生命をかけた一大イベントに、出産があります。
男性の私には想像もできないほどの痛みがあるそうですが、産後うつや膀胱炎などいろいろ不調に悩まされることが多くあります。

そのお悩みの中でも、多いのが腱鞘炎でしょう。

ではこの腱鞘炎、赤ちゃんを抱っこしすぎるから起きているのでしょうか?
そして、鍼灸で腱鞘炎は改善できるのでしょうか?
改善できるのだとしたら、その東洋医学的メカニズムは?

今回はそんな疑問にお答えしていこうと思います。

腱鞘炎を西洋医学的に簡単にざっくり説明

腱鞘炎は筋肉と骨を繋ぐ腱と、腱を包む腱鞘との摩擦で起こる炎症症状です。詳しくはこちら
病院に行くと医者から「使い過ぎによる腱鞘炎ですね」と言われ、シップと痛み止めと胃薬をもらって様子を見るしかない症状です。

つまるところ使わないで安静にしているしかない

腱鞘炎の中で多くの方が想像するのが、手首の痛み症状=ドケルバン病でしょう。
ばね指なども腱鞘炎の一つですが、一般的に腱鞘炎と言いわれているのは、このドケルバン病のことを指しています。

使い過ぎは確かに、原因の一つですから、赤ちゃんがいるお宅では、お母さんが抱っこする機会が多いので、腱鞘炎が起こりやすいのも納得です。

でも、同じ体重が48㎏のお母さんの場合、2500gの赤ちゃんのお母さんが腱鞘炎になって、3200gの赤ちゃんのお母さんは腱鞘炎にならない、なんてこともザラですよね。

単純に考えて、体重の重たい赤ちゃんのお母さんの方が、負荷が強いのだからより、腱鞘炎になりそうなものです。
でも決してそうじゃない
これがなぜなのか?この答えはお医者さんは持っていません。

答えを持っていないから、お医者さんはせいぜい炎症を止める以外、なにもできないわけですね。

産後に腱鞘炎が多発する理由を鍼灸師の立場から考察

それではなぜ産後に腱鞘炎が多発するのでしょうか?

前述のとおり、西洋医学ではせいぜいが「だっこによる使い過ぎによるもの」という診断です。
もちろん、それも原因の一つではあるのですが、東洋医学ではどうなのでしょうか?

胎児と出産について少し考えてから、その答えを見ていきたいと思います。

東洋医学における妊娠・胎児など

腱鞘炎が多い理由を述べる前に、東洋医学で考える胎児について少し、お話していきます。
これが原因へと繋がっていくので、少々お付き合いくださいね。

胎児は、全てのエネルギーの基である、精そのものです。

胎児は母の精(陰、卵子)と、父の精(陽、精子)が混ざり合ってできたもので、陰陽の集合体と言えます。

母体からもたらされる血(けつ)から精を、陰陽に分解して、陰を栄養・体成分に、陽を成長エネルギーとして成長していくのです。

当然、母体は胎児の分まで栄養を摂らなくてはなりませんが、ここで問題がいろいろ発生します。

血自体や、血流不足によってマタニティブルーになったり、消化器系の不活性化でつわりなどの食欲不振になったりしてしまうのです。

ですから、妊娠前に貧血や婦人科疾患があると、胎児にきちんとした栄養が行かず、陰陽バランスが崩れて流産…なんてことも多々あるのです。

東洋医学でみる出産

では、出産はどうなのでしょうか?

胎児は母体の血からその成長に必要なものを全てもらっていますので、
胎児=母の気血そのもの
という公式が成り立ちます。

そして気血は精からできますから、
胎児=精
という公式もまた、成り立つのです。
つまり、

胎児=母の気血=母の精

が成り立ち、これがポイントになります。

精は五臓論によれば腎が主り、腎は蔵精(精を蓄える)性質を持ちます。
また、胎児のエネルギー源である血は、肝が主ります。

母側から見れば出産は胎児の排出行為ですから、腎の精そのものを大量に、しかも血も同時に失うこととなります

西洋医学的に数値で出産をみていくと、男性でも出産の大変さがわかると思います。

3000gの赤ちゃんとすると、平均的な母体で体重の5%以上を数時間~一日で一気に失うわけですから、母子ともに命に別状なく生まれてくることは、本当に奇跡なのです。

データとして、成人男性Aの体重を60㎏と仮定すると、その8%が循環血流量と言われているので4.8Lとなります。
このうち2Lが失われると、死に至ることもある、とされています。(出典:家庭の医学)

生まれてきた赤ちゃんは通常であれば最低2.5kgですから、そのうちの半分である1.25㎏が筋肉や骨などの組成物だとしても、相当量の出血(1.25㎏)であることは間違いありません。

つまり、女性は出産で一気に最低でも1L以上の血液と、1㎏以上の体液を含めた物質成分を失うことになるのです。

ちなみに羊水はだいたい3Lとされていますから、合計6㎏も体組成分がなくなるがどれだけのことか、男性でも想像がつくと思います。

先ほどの男性Aさんで言えば、6㎏の体重は腕一本程度の重みに該当します。
自分の腕が急になくなって、そこに加えて1L以上の急性の貧血ですよ?

生命をかけての出産という行為を考えた時、私は本当に女性には頭があがりません(もちろん、他のことでも同じですが…)

鍼灸師からみた腱鞘炎になる理由

やっと本題です。
でも、ここまでを知識として持っておかないと、これから先が理解できないのです。

先ほど、赤ちゃんは精そのものである、という公式をご覧に入れました。
そして、精は腎に収められているとも勉強しました。

陰陽の考えていけば、腎が弱るとその力の弱りを大きく受ける臓腑が三つあります。
その三つとは、膀胱、そして大腸です。

肝は血の元締めで、腎が弱ると血が作れなくなるので、肝の力が落ちてしまいます。
膀胱は腎と陰陽表裏の関係なので、腎が弱ったことで発生する熱(虚熱)で、膀胱炎になったりする産婦さんが多くなります。

じゃぁ大腸は?
大腸は子午流注の関係で、上半身で腎の弱りによる熱を受け止めているのです。
※子午流注は時計の反対の位置にある経絡相関のこと

大腸に上がった熱は大腸経へと波及して、
その経絡である手首へと熱を発生させます。

ここでやっとつながりましたね!長かった…(>_<)

東洋医学では、余計な熱は痛みとして発症する、とされていますから、ドケルバン病になる、というわけです。

つまり、産婦さんの腱鞘炎が多い本当の理由は、出産による腎の弱りなのです。
だから手首になにかの施術をしても、よくなるのはその場限りで、翌日にはまた痛みが出てしまうんですね!

誤解の内容に付け加えておきますが、筋肉も腱(筋肉と骨を繋ぐ部分)も肝の担当なのですが、肝の力が落ちたことで、使いすぎると血の流れが悪くなることで痛みがでます。
これを不通則痛(ふつうそくつう)と言います。

また、出産後のような極端な栄養不足もやはり、痛みや違和感を出すことがあります。
こちらは不栄即痛(ふえいそくつう)といいます。

鍼灸における産婦の腱鞘炎の施術/養生

産婦さんの腱鞘炎はこの不通即痛、不栄即痛の両方の条件を満たしているので、東洋医学の見地からも産婦さんはとてもか弱い存在で、異常が出やすい状態なことがわかります。

そうなると痛みが再発しないようにするには、腎の弱りと血=肝の弱りを補うことが、原因を改善することになります。

施術を受けつつ、養生してもらうのが一番なのですが、できれば1カ月はゆっくり寝て、食べて、日に当たりつつ運動をしていただきたいものです。
もちろん、なんでも「し過ぎは厳禁」ですから、寝すぎても、食べ過ぎても、動きすぎてもいけません。

さて、施術する際のツボに関して言えば、(あくまで個人的な最有力候補として)

腎を補うため:復溜、陰谷、腎兪
肝を補うため:曲泉、肝兪、太衝

ここに挙げたツボはあくまで教科書的に、って話なので、必ずしもここが正解でもないですし、その方の弱り方や、出ている他の症状によっては逆効果になることもあります

このような理由から、よくある「〇〇という症状にはこのツボ!」みたいな本や情報がありますが、東洋医学で治療する鍼灸師の立場からすると、かなりナンセンスと言わざるを得ません。

むしろ、これらのせいで「鍼灸は効かない」だの、「インチキ、プラセボ」だのと言われるのは、心外以外のなにものでもないです。

苦しむ患者さんの症状をどう理解して、どう施術していくか、が鍼灸師の腕の見せ所であり、難しいですが、学問として面白いところでもあります。

上記のツボは、産婦さんに限らず私がよく使うツボでもありますが、そこにはきちんと体表観察や問診などを行い、原理原則に則った理屈の上で、選穴は毎回変化しています。

単純な治療機序で言えば、腎が補われると、大腸に返されていた熱を、腎が自分で必要分を抱え込めたり、正式な熱の返しどころである膀胱へ流せるようになります

これでも取れない大腸経に残った熱=痛みがある場合、大腸経で詰まりを起こしているツボを操作することで、流れを改善していくこととなります。

多くの方は腎・肝を補った時点で、痛みが半分以下になります。
これを本治法と呼び、気血のバランスの乱れを整えることで、治していく方法です。

気血を鍼灸で一時的に補い、バランスを整えると、患者さんの免疫や回復力が正常に働きだします。
正常である時間が長ければ長いほど、当然、症状の回復が早くなります。

ですから、鍼灸施術は鍼灸師だけでなく、患者さんと二人三脚で治療していく技術でもあります。

本治法を行っても全く改善しない場合、改めて原因を探りなおすか、患者様が「術者に言えない何か」があったり、まだ信用されていない場合がほとんどです。

鍼灸術が気の交流そのものである以上、患者-術者間に不信感があると、術の効果が落ちるのは当然です。
二人三脚で、片方が足を出さないと転んでしまいますよね。それと同じです。

初対面の施術者に、心のうちを全部さらけ出すには勇気が必要だとは思いますが、全てを受け止めて、改善していくために全力で施術しますので、信用していただけたらと思います。

産後にでるその他のお困りごとも鍼灸師にお任せあれ

いかがでしたでしょうか。

手の症状なのに、出産による気血の消耗が原因なんて、考えもしなかった方が多いのではないでしょうか。

しかも主な治療穴は腕ではなく、足の方にあるなんて、東洋医学を知らない方からすれば、魔法のように思われるかもしれません。

この辺が東洋医学が「インチキ」「プラセボ」と言われてしまう部分かもしれませんが、前章のようにしっかりとした理論の基、施術を行うので効果がでるのです。

そうそう、出産に関係なくても、手首の腱鞘炎を患っている方は、便通に問題がある方が多くいるのも事実です。
大腸経に熱があると、便自体が渇いて便秘になったり、熱を冷まそうと水が集まり、下痢症状を起こしたりしている方も多くいます。

大腸も消化器ですから、消化器全般を司る脾の働きにも影響を及ぼします。

なぜかと言えば、痛みや便通異常があると当然、運動量が減ります。
運動量は手足をどれだけ動かしたか?とも、言い換えられます。

手足の動きは脾に直結しており、脾が虚すると余計に手足の動きが悪くなります。
運動量が不足すると血流の悪化を招くので、余計に便秘や下痢などの便通不良につながります。

このように、東洋医学ではどこかの働きがどこかに影響しているので、どこそこが弱る=虚するとその影響でどこかに病として出る、というのが一般的な考え方です。

ですので、出ている症状自体をいじっても、

病気の大元の虚を補わなければ、また同じ症状を繰り返す

ということになります。

もちろん、捻挫や骨折のように、虚は関係なく起こる外傷や、インフルエンザなどの体力があっても罹ってしまう病気は、この限りではありません。

外傷やインフルエンザのようなものでも、回復の速度は五臓六腑の力の強弱に関わってきます。

どこに虚があるか見極め、鍼灸をすることで、今出ている症状のみならず、心身全体のバランスを整えていくことこそ、あなたが本来の痛みも不安もない姿に戻れる方法といえるでしょう。

そのために、私は全力でお話をお伺いし、全力で施術を行います。
これは私とあなとの約束であり、治療家としてのプライドであり、治癒への原理原則でもあります。

もし、これを読んでいるあなたが、腱鞘炎も含めて、例えば産後うつや貧血にお悩みなら、そのお悩みをいっぺんにまとめて解決しませんか?

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