ご覧いただきまして、ありがとうございます。
楽陽堂鍼灸院の院長山口です。
今回は最近よく聞く【ツボ】について、鍼灸師からの所見と改善策をお伝えしていこうと思います。
最後読むと、さまざまな症状で苦しむあなたの改善のヒントがみえてきますよ。
ここ数年、NHKや雑誌などで鍼灸特集などをやってくれているおかげか、ツボって言葉がますます一般的になってきてうれしいです♪
でも、恐らく…。
「ツボってなに?」って聞かれて、ちゃんと説明できる人は少ないんじゃないかなぁ、と思います。
そこで、今回は僕が勉強してきたことから考える、ツボについて書いていきたいと思います。
最後までよろしくお付き合いくださいね!!
鍼灸で使われる「ツボ」ってなんで効くの?
ツボって、一般的には言葉では知ってても「じゃぁそれってなんなの?」って聞かれたら、
「肩こりには、ここのツボが効くんだって!」
って、症状改善できる不思議なもの程度の認識でしょう。
ツボは経絡上にある
ツボは現在判明しているだけでも、2800年ほど前にはある程度理論体系づけられていた鍼灸の用語で、正しくは『経穴(けいけつ)』といいます。
経穴の経は「あたたたたたたたたたたっ!!」で有名な、経絡秘孔の経絡のことです。(『北斗の拳』ですが、30歳以下にはわからんか…)
では、経絡とはなにか?というと
「人間の体に走っている、気の通り道」
のことをいいます。
経は、人体を縦に走る14本の気の通り道のこと。
14本それぞれに名前があって、督、任、肺、大腸、胃、脾、心包、三焦、膀胱、腎、心、小腸、胆、肝の14経のことをいいます。
さて、これら14本の経のことを『正経十四経』と呼び、これらが輪のごとく繋がり、その気の循環が正しくあれば、決して病気にならない、というのが東洋医学的鍼灸の基本になります。
絡は、横糸を意味していて、経を横につなぐ道という意味です。
この経と絡が密接に連携して、気の流れをスムーズにしているのです。
14経はそれぞれに影響を強くする臓腑が、その名に絡めて決められています。
肝経なら、現在でいう肝臓のような肝の臓に対しての影響が強いことを意味している、ということになります。
これら十四経のほかにも、気の流れが多すぎる時のあい路(逃がす道)として、奇経と呼ばれる連絡通路があります。
陰維脈・陽維脈・陰蹻脈・陽蹻脈・衝脈・帯脈の6つに、正経に属する任脈・督脈の2つを加えて、奇経八脈と呼ばれます。
任脈・督脈が正経にも含まれるのは、この二つの経絡が、体の中心線を走っているからです。
それゆえに、人間は胎児の状態になるために、この二経がまず成り立ち、ここからほかのすべての経絡が発生して成長していく、という方もいます。
「気」は胡散臭いですか?
ところで…、『気』というと、あっという間にスピリチュアルなことを想像して、「胡散臭い」とか言われます(実際、何度か言われましたw)が、現代日本においても、気という単語はかなりよく使われるワードです。
みなさん、普段はあまり気にしてないだけで。
「元気出せよ」「気を遣う」「気にしてないよ」などなど、普段の会話でも使いますよね。
生活の中で言えば、「空気」「電気」など、ほらね、たくさんある。
これだけ『気』という単語を使っているにもかかわらず、日本人ほど気を使った治療に懐疑的な人種も珍しいです。
以前、アメリカ人に患者さんに、たどたどしい英語で、
“So,I’m going to treat you with acupuncture and force.”
(じゃぁ、これから鍼と気を使って治療しますね)
と伝えたら、”Oh!! Force!!Great!!”って、外国人の方が気に対して、興味津々に目を輝かせて喜んでくれました。
もちろん、詳しい説明ができるほどの英語力は、僕にはありませんので悪しからず。
あとは片言の単語とボディランゲージでどうにかしました。(苦笑)
鍼灸で重要なツボと経絡の関係
…少々脱線したので、ツボの話に戻します。
経絡の意味がわかったところで、今度は本ブログの主役であるツボ自体のことです。
ツボはどんなところに存在するのでしょうか?
督脈と任脈を除いて、経絡はそれぞれが担当する臓腑(現在でいう臓器に近いもの)があります。
臓腑とは、一般的に使われている、五臓六腑のことです。
東洋医学に触れるとよく聞く、肝・心・脾・肺・腎のことです。
それぞれの臓腑に影響を与える経絡上で、人体の表面に臓腑の良・不良を『気の状態』として知らせるところがあります。
この経絡に臓腑の状態を伝えるポイントが経穴、いわゆるツボです。
冷えてることもあれば熱いときもあるし、疲れてしまってくぼんでいたり、詰まってしまって盛り上がっていたり…。
つまり、ツボは心身の異常探知機なのです。
そして、逆説的にツボはその影響を及ぼす部分や、心身に与える影響をそれぞれに割り当てられているのです。
だからこそ、鍼灸師はこのツボを使うことで、気血の流れを整えてあなたの心身を改善していけるんですね。
鍼灸師からみたツボ本の功罪
患者さんだけでなく、一般によく訴える症状である肩こりや腰痛、冷え症など、症状を改善する効果を持つツボをまとめた、いわゆる『ツボ本』たち。
その注目度はここ数年、ぐんぐん上がっているので、インターネットなどで調べ、使ってみた記憶がある方も多いのではないでしょうか。
もし、それを使ってみたけど、「全然効果がない!」なんて言われても仕方ないですし、むしろ「悪化した!」なんて方も…。
おかげで鍼灸全体が「効果がでない」「インチキ」なんて言われてしまう側面を併せ持っています。
たまに「すごくよくなった」と、言う方もいらっしゃいますが、そのほとんどはプラセボ(心理的効果)です。
その証拠に、自分以外の方に同じような効果を出す=再現性はほぼ見られません。
では、それがなぜなのか?
ツボ本の功罪をこれから述べていこうと思います。
ツボ本の功績
確かにツボは強く関係する経絡上にある症状を改善する効果を持っています。
例えば「Aというツボを押すと肩こりがよくなる」と書かれていたり、その場所の説明もされています。
確かにAは、肩こり解消の効果を持っているのかもしれません。
それで救われた方も多いと思いますし、プラセボだとしても、肩こりが楽になったことで、日常生活が楽に送れたらいいですよね。
一般の方への、鍼灸を含めた東洋医学の浸透にも一役買ってくださってますし、これは間違いなくツボ本の功績です。
有名なところでいえば、肩こり改善の合谷、消火器不良の改善に足三里、婦人科疾患に有効とされる三陰交などは、パソコンの単語辞書に最初からインプットされているくらい、有名なツボです。
ツボ本の罪
でも、ここでシンキングタイム。
前章で説明した「経絡の流れが正しいことが健康である」という、基本に立ち返ってみましょう。
仮に、Aのツボを押したためにAのある経絡の流れが、必要以上に強くなってしまったら、どうなるでしょうか?
気の流れが良くなることで、少しの間は症状は楽になりますが、流れがよくなりすぎてしまったことで、後々にもっと症状が悪化したり、あるいは何かしらの他の不調を引き起こすことも、十分に考えられるのです。
しかも、もし不調に陥っても、一般の方にはなぜそれがそうなったのか、理解も分析もできません。
まさか自分の症状を良くするためにしたことが、もっと体調を崩すきっかけになったなんて、きっと思いもよらないことでしょうから。
~例~
肩こりを解消するために、Bさんは雑誌に載っていた通り、合谷をぎゅ~~っと押しました。
少しして肩こりはすっきりしたけど、数時間後に頭痛が発症してしまいました。
これを何度も繰り返しているうちにBさんは『肩こりのあとは頭痛になる』と、思うようになりました。
Bさんの場合、頭痛になる原因は『肩こりの時に合谷を強く押すことで、気の流れが強くなりすぎること』なのに、『肩こりの後は頭痛になる』と、認識してしまっています。
きっとBさんは頭痛の本当の原因に気づくことなく、肩こり解消のために合谷を押し続けるでしょう。
これでは本末転倒であり、これこそが私の考えるツボ本の罪です。
こういった観点から考えると、ツボ本を利用するときは十分に気を付けてほしいと、思います。
大きな不調が出る前に、餅は餅屋で、ツボは鍼灸師に任せるのが一番です。
鍼灸師でもツボ探しは難しい
ここまでを読んでいただければ、お分かりになると思いますが、一般の方でツボをきちんと捉えられる方は、ほぼいません。
鍼灸師でも、このツボ探しは一緒の課題の一つです。
手で押してもツボに当たらない?
なぜなら、ツボは本やインターネットなどの情報通りの場所にあるわけではないのです。
正確に言うなら、ほとんどのツボは正しいとされている場所を中心として、100玉~500円玉くらいの範囲の中にあるのです。
その範囲の中からちゃんと効くところは、米粒ほどの大きさであることが多く、厳密にいえばこの米粒こそがツボなのです。
地図で言えば、ご自分の住んでいる地域の地図上で、自宅を指しているようなもの、と言えば伝わるでしょうか。
これだとピンポイントで自宅を当てるのは。まず困難ですよね。
しかも自宅がマンションなどだったら、その何階のどの部屋に住んでいるか?なんて絶対にわかりません。
そういう意味でいえば、ツボも立体でとらえる必要もあるので、発見したツボを垂直に押すのか、斜めだとしてどちらの方向に押すのかでも、効果の多少があります。
鍼だとどう?
鍼ならこれに
どの程度の深さで、どんな刺激を与えれば最も効果的か?
という、技術力・知識力・直感が必要とされます。
ちなみに私の師匠の言をお借りすると
「鍼でツボを取るとき、2㎜ずれたら、真の効果は出せない」
だ、そうです。(汗)
直径0.16mmの鍼で米粒を狙うだけでもそれなりの技術が必要なのに、それが縦横深さの合計で2㎜ずれたら、効果半減以下ですよ?
みなさんの健康のため、鍼灸師は日々努力と研鑽を重ね、一穴ごとに、命を懸けて鍼をさせていただいているのが、お分かりになってもらえたら嬉しいです。
一般の方の養生には、鍼よりもお灸がおすすめ!
さて、気を取り直して…。
その点、お灸が一般の方でも効果が出やすいのでおススメです。
なぜなら熱の力である程度の範囲をカバーしてくれるので、米粒を見つけて押すよりも確実に効果がでることでしょう。
大抵の場合、気か血の流れが滞っているか、弱っていること、冷えが入り込むことで、不調になっています。
熱はそれ自体が動かしたり、動かすことで力の強弱を均一にする力、冷えを温める力を持っています。
また、熱は陽に属するので、放射状に広がっていく基本的性質があり、前述のとおり、範囲・面でツボを、鍼に比べて簡単に刺激しやすいのです。
個人的には熱の強いものより、弱いものでジワ~~と温めた方が効果が高いと感じます。
高熱タイプじゃないと熱を感じない方もいらっしゃるので、ご自分にあったものをお試しあれ。
気を付けないといけないのは、熱は強すぎると邪=害になる、ということ。
大抵の方は、ヤケドくらいしたことはあるのではないでしょうか。
お灸も熱い方が効く、という方もいますが、やりすぎると当然、やけどになります。
ヤケドは気の通りを阻害しますから、熱と痛みとして出現することになります。
なんでも程よく、が一番ですね!
ここではせんねん灸に代表される、台座灸の使用についての注意点を書いておきます。
~お灸使用時の注意点~
・お灸は必ずしも燃え尽きるまでやる必要はありません。
・「温かい」から「熱い」に変化してきたら、もったいながらずに外しましょう。
・熱いのを我慢すると、逆効果になることが往々にしてあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ここまでをまとめると
- ツボは漢字で【経穴】と書く
- 体表で経絡、臓腑の良し悪しを知らせる【異常発見機】
- 使い方によっては、逆効果になる
- ツボを使って養生するなら、お灸が最も効果的
- 鍼灸師でもツボを正確にとらえるのは難しい
ということになります。
一口にツボといいますが、WHO(世界保健機構)が認めるだけでも、十四経上にある361穴に加え、奇穴(きけつ)と呼ばれる、正経・奇経上にはないツボも合わせると、400を超えるツボがあります。
そして、それぞれのツボ一つ一つに名前があり、それぞれに役割を持っています。
私たち東洋医学的鍼灸師は、経絡やツボなど、それぞれが持つ特性や効果を考慮し
患者さん一人一人に合わせた、最適な結果を提供できるよう、日々努力と研鑽を重ねています。
「ツボ本に載っていたから」とか「ネットでこう書いてあったから」という、情報のすべてを否定はしません。
ですが、シロウトの技術では全く効果が出ないことも、逆効果の危険性も、頭の片隅に置いておいてもらったうえで、ツボを使ってもらえたら嬉しいです。
もし、ツボの効果をちゃぁぁぁぁんと味わいたいなら、ぜひ、楽陽堂鍼灸院にいらしてください。
あなたの「なんとなく」とか「いつも感じる」痛みや違和感を、ツボを使って治療します。
毎日の生活を、痛みも薬もなく笑顔で暮らせる。
楽陽堂鍼灸院はそんな生活作りを応援する
あなたのライフメディカルパートナーです。
お持ちでしたらツボ本でも持って、一度遊びにいらしてください♪
効果的な使い方、教えちゃいますよ!!